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赤い文化住宅の初子

赤い文化住宅の初子 [DVD]

赤い文化住宅の初子 [DVD]

母に先立たれ、父も小さい頃に蒸発してしまい、兄と2人で文化住宅に暮らす15歳の少女、初子(東亜優)。兄は高校を中退して稼いだお金を風俗に使ってしまう始末で、家にはテレビも電話も何もなかった。そんな初子に対し、大好きな三島君(佐野和真)は一緒に東高に行こうと約束してくれた。しかし、初子に高校へ行くお金があるわけもなく…。貧乏で不幸にまみれた少女のささやかな希望を綴った松田洋子の同名コミックを女性監督タナダユキが映画化した切ない純愛物語。

赤い文化住宅の初子 映画作品情報 - シネマカフェ

貧しい生活が続けば目先のことで精一杯になってしまって賢明な判断が出来なくなってしまう。そして正しい判断が出来ないことでその貧しい生活から抜け出すことができない。「貧すれば鈍する」という言葉は、まさにこんな悪循環に入る理由を端的に表した言葉です。
初子の兄はまさにこのような状態で、稼ぎもないのに毎日飲み歩くわ、いさかいを起こして仕事をクビになるわ、挙句お金がないのにデリヘル呼ぶわと現実逃避ばかり。普通に考えれば毎日少しずつでもお金を貯めて今の生活から抜け出す努力をすべきなのは火を見るより明らかなのですが、どうもそういう発想がまったくないのです。


一方で同じ生活をしている初子の貧しさに対するアプローチはまったく異なります。
まず、初子の日々の生活は全く楽ではないし、毎日が絶望そのものとしか思えない生活をしています。この点においては当然兄と同じなのですが、兄のように酒や女で現実逃避するのではなく初子は日々を淡々と生きています。
現実と向き合ってただ生きようとするその姿をは、彼女は自分の人生に対して既に諦観の境地にあるのではないかとも思えたのですが、どうもそれだけではなくて大好きな少年と一緒にいられるようになりたいというただそれだけの願い/希望が胸の中にあることが毎日の生きる糧となっているのです。これは問題を先送りして現実逃避しているだけと言われたらたしかにそれはそうとも取れるのですが、私はそうではなくて、初子は未来の自分の幸せを人生の道を照らす光として行きようとしているように見えるのです。
一緒に同じ高校へ行こうとか、大きくなったら結婚しようとか、そんなわずかな希望を頼りに初子は毎日を生きています。その初子のいじらしさにぐっと気持ちをもっていかれました。
強く感情移入したために、駅で三島君と別れのキスをするラストシーンを見て、私は初子に幸せになって欲しいと心の奥底からそう感じました。すごく切ない作品でした。


貧しさやその貧しさゆえに受ける理不尽さ。
そういったものを受け止めて生きる初子を演じた東さんは、表情ひとつとっても貧しさに心を多くを削り取られてしまっている様子をうまく演じていてとてもよかったと感じました。また、その演出も非常に伝わりやすくてよかったと感じました。
そういえば東さんは明日からドラマにも出るようなのでチェックしてみます。


この作品はちょうど一年くらい前に公開されたのですが、当時とても観たかったにも関わらずいくつかの不運が重なってしまい観ることが出来なかったというとても負の思い出のある作品です。
ひとつ目の不運はそもそも近くではどこも上映してくれなかったこと。これは不可抗力なのでしょうがないです。
もうひとつの不運は都内に観に行こうとしたのですが、なぜかこの作品が公開されている時期の週末になると公私共にイベントが入ってしまい、結局行けずじまいだったということです。後にも先にもこれほど週末に予定が入っていたのはこの時くらいです。この作品を観に行くこと阻止しようという何かの力がはたらいたとしか思えないほどでした。

この後も再上映館を見つけては行こうとしたのですが、これまたその週末だけは仕事が入ったり子どもが熱を出したりと折り合いがつかず、一番最近だと池袋の新文芸坐で3月に再上映されたのですが、この時は平日だったので全くいける気配すらなくて、もう何度観に行けないことを悲しめばよいのか分からないほど振られ続けた作品です。
あまりに観に行けないので、つくづく縁のない作品だと思っていましたが、同監督の苦虫女が来週末から公開なのでそれに先駆けて観ておこうと思い、DVDに手を伸ばす事にしたのですが、上記のとおり非常にいい作品だったのでどこかで再上映されることがあればぜひとも観に行こうと思いました。


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