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「四月物語」見たよ

四月物語 [DVD]

四月物語 [DVD]

四月、桜の季節。北海道から上京した卯月は、東京・武蔵野の大学に通うため、慣れない土地で独り暮らしを始める。おとなしい性格の彼女は、変わった性格の友人やアパートの隣人など、個性の強い人々と触れ合っていく。だが、そんな卯月も大学の志望動機を聞かれた時だけは、思わず言いよどんでしまう。実は、卯月には人に言えない理由があったのだった…。

四月物語 - Wikipedia

新文芸坐にて。


高浜虚子の有名な句に「去年今年貫く棒の如きもの」というものがあります。
これにはさまざまな解釈があるようですが、わたしは「年が明けても今までとまったく違う日が始まるわけではなく、棒で貫かれているような一続きのものだ」という解釈で覚えています。
大晦日はその切迫感に浮かれ元旦になった瞬間に「今年はまだ365日もあるのか...」と落ち込んでしまうわたしにはとても書けない句だし、これを一読しただけではとても正しいことを言っているとは思えないのですが、でも何度もこの句を読んだりこの句が世間的に認められているのというのを聞いたりすると、何だか虚子の言っていることが正しいような気がしてきます。
# 人の意見に流されやすいというだけなんでしょうけど...


そんなわけで大晦日と元旦は続いているというのは何とか納得できるのですが、実はこれ以外にどうしても連続性が感じられない日というのがわたしにはありまして、それは4月1日なのです。


年度という表現で表される期間が切り替わるこの日だけは私にとっては昔から特別な日です。
小学生・中学生・高校生の頃は新しい学年へと切り替わる日として、そして大人になってからは異動があったり社歴がインクリメントされたりする日としてどうしてもそこに前日との断絶を感じずには居られないのです。


そうした特別な4月1日の中でも、格別に断絶を感じたのは新しい生活へ飛び込むことになる年度が始まったときです。
具体的には大学に入った年だったり、会社に入った年がそれに該当するのですが、もう明らかに前日までとは違う空気の中で生きていることを意識しながら生活している、心もとなさと新しい環境への期待が入り混じった複雑な感情というのは今思い出しても気持ちが高揚してきます。
取り巻く環境が変わっただけで、昨日までの自分とはまったく違う自分になってしまったようなそんな感覚が沸いてくるから不思議です。とても昨日までの自分が同じ自分とは思えない。


本作は新しい生活への一歩を踏み出した卯月の瑞々しさあふれる四月の様子を描いているのですが、もうこれがものすごく四月らしいのです。引越しのトラックから荷物が運び出される様子や、大学に入ったばかりで周囲との距離感が取れず悩む様子などにはわたしの思う「四月らしさ」がぎゅっと詰め込まれています。
そして卯月がその大学を選んだ本当の理由が明らかになるにつれて、卯月という人に対する見方も大きく変わってくるのですが、これがまたすごく甘酸っぱい理由なんですよ。入学する大学を選ぶ理由がそれでいいのかと問い詰めたくなるのですが、でもこのどうしようもないけれど貫く強さがある部分こそが若さなんですよね。もうシミジミと見入ってしまいました。
松たか子のいまひとつ冴えない雰囲気がこれほど積極的に生かされている作品というのは初めて見たような気がします。冴えないというとあまりよい表現ではありませんが、見かけと内面の強さのギャップがとてもいい感じでした。


この作品の松たか子は本当に素敵で、リアルタイムで見ていたら間違いなくファンになってしまっていた気がするくらいよかったです。
春らしい色遣いと淡い色合いの映像、そこに映し出される松たか子に見とれてしまいました。