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「イリュージョニスト」見たよ


1950年代のパリ――ロックやテレビによって時代が目まぐるしく変化していく中で、昔ながらのマジックを披露する手品師がいた。彼の名はタチシェフ。かつての人気は薄れ、いまはバーのドサ周りの日々。ある日スコットランドの離島に流れ着いた彼は、片田舎のバーで貧しい少女アリスと出会った。タチシェフを魔法使いと信じ、去っていく彼の後を追うアリス。言葉が通じないながらも、エジンバラの片隅で2人は一緒に暮らし始めたが…。1982年にこの世を去ったフランス喜劇映画の巨匠ジャック・タチの遺稿を、鬼才シルヴァン・ショメが映画化。

イリュージョニスト 映画作品情報 - シネマカフェ

目黒シネマにて。2011年上半期ベスト未見作品補完計画第二弾。


作中にはほとんどセリフはなくすべてが登場人物の表情や状況だけで語られるのですが、言葉はないのにとにかく伝えたいことが伝わってくるすばらしい作品でした。


小学生の頃。将来、自分が両親と離れて暮らすなんてことは全然考えたこともなくて、とりあえず死ぬまではずっとこのまま一緒に暮らすんだろうなーと特に理由も根拠もなく思っていました。そして、それと同じようにその頃なかよく遊んでた友だちともこのまま年を重ねても一緒につるんでるんだろうなと信じていたし、いつか離れてしまう日がくるなんて考えたこともありませんでした。


ところが、実際には中学やら高校やらに進学して学校が別々になれば、どれだけ仲がよかった友だちとも自然と会わなくなりますし、大学に入って家を出れば親とも離れて暮らすことになります。仲のよかった友だちと疎遠になってしまうのは、もしかしたらわたしが相手を大事にしていないことが原因ではないかと不安をおぼえたり、自分のやりたいことのために家族と離れて暮らすことを選択するのは身勝手なんじゃないかと考えてしまい、自分の態度や選択が正しかったのかどうかについてとても悩んだことがあります。
いま思えば「なんであんなふうに考えてたんだろう...」と思っちゃうんですが、でも当時は自分に欠陥があるんじゃないかと本気で頭を悩ませていて、これでいいのかなあ...なんて考えてたんですよねー。


結局、どれだけ仲がよかったりつよいつながりがある者同士だと思える相手であっても、いつまでもずっと一緒というわけにはいかないのが当たり前のことだと思えるようになったのはわたしもずいぶんと大人になってからでした。そしてこのことが当たり前のことなんだと思えるようになってからは、とても気軽に他人と付き合えるようになったし、そのおかげで生きていくのはそれまでよりもとても楽になったような気がします。


そんなわたしが本作を観て感じたのは「みんなそれぞれ自分の人生を生きるしかないんだよね」ということです。


あまりよい言い回しが思いつかないのですが、生きることって道を歩くこととすごく似ていて、みんなそれぞれ自分の進みたい方向に道を見つけて歩いているんだと思うんですよ。おかれている環境や価値観、さらには生きている時間が違えば歩く道も違っていて、誰もが同じ方向に歩いているわけじゃないんだとも思うのです。
だけど、たとえば一人で歩くのがしんどかったり、寂しかったりするときもあるだろうし、はたまた一人では出来ないことをしたいと思うこともあって、そういうときには偶然その時に同じ方向に歩いている人と一緒に歩いていくことも出来るんじゃないかなと。お互いが同じ方向を向いて歩いている状態、それが友だちと仲良くなるということや家族と一緒に生活するということなんだと思うのです。


ところが、その人と一緒に歩けるのはあくまでお互いの道が重なっている時だけで、お互いの進む道が分かれてしまえばまた別々の方向へ歩いていくしかないんですよね。寂しいけど。そうなったときにはお互いが一緒にいることよりも、最後はお互いが進みたい方向に進むのが一番健全なんじゃないかなと。


そんな人と人の関わり合いのあり方を含め、人が人として生きていることを本作がとても丁寧に描いていると感じました。大きなイベントなどがあったわけではないのにあのラストを観ていたらグワーっと胸にこみあげてくるものがありました。


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