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「鍵泥棒のメソッド」見たよ


35歳にして無職、俳優を目指すも挫折し自殺しようと思っている男・桜井(堺雅人)。その前にと行った銭湯で、やけに羽振りのいい男・コンドウ(香川照之)が目の前で転倒、記憶喪失に。つい出来心からロッカーの鍵をすり替え、持物を盗み出しコンドウになり代わる桜井。だが、実は彼は非合法な裏稼業を営む男で、桜井はヤクザ絡みのトラブルに巻き込まれる羽目に。一方、自分を桜井だと思いこんでいるコンドウは、あまりに情けない自分の境遇に茫然とするも、病院で出会った女性・香苗(広末涼子)の助けもあり、前向きに生活を立て直していく。その香苗はある理由から、「どうしても結婚したい」女だった。そして、コンドウの記憶が戻ったとき、桜井が招いたトラブルを解決しなくてはならない瞬間が訪れる――。

鍵泥棒のメソッド 映画作品情報 - シネマカフェ

MOVIX宇都宮で観てきました。


見事な演出で観客をびっくりさせてくれる作品を世に送り出してきた内田監督の最新作ということで楽しみにしていましたが、一分の隙もなく完璧にシーンを積み重ねているすばらしい作品でした。
エンドロール中に流れるラストのワンシーンも含め、登場人物それぞれの物語の提示の仕方とふくらませ方、そしてそれぞれのキャラクターやエピソードの絡ませ方がとにかくうまくて、最初から最後までぜんぶおもしろかったです。すごいよかった!


さて。
私の好きな物語のテンプレートのひとつに「本来は出会うことのなかったはずの人たちが出会う」というものがあります。

ジブリ作品は割とそういう作品が多いのですが、たとえば「カリオストロの城」なんかもそうであるように、身分や立場、もしくは住む場所が違うために本当であれば出会うはずのない人が出会い、惹かれあって、でもそれぞれの世界に戻るので最後には別れることになるという話が大好物です。

本作の枠組みをざっくりとまとめると、35歳無職で自殺を考えている男性と便利屋として人殺しも手掛ける40代男性、そして何事も計画的に物事を進めたい雑誌編集者という普通に暮らしていたら絶対に出会うことがなかったであろう3者が出会い、そしてその仲を深めていくというお話ですので、まさにわたしの嗜好にぴったりと合致する内容だったわけです。


価値観を異にする者同士の反発と融和を見事に描いていたしラストの多幸感満載の終わり方は見てよかったと素直に思えるものになっていました。鑑賞後にこんな気分になれると、「あー、いい作品見たなー」と素直に思えます。


それともう一点。
この作品を見ていてちょっと怖いなと感じて印象に残っているが、自分以外の人が自分の人生を自分以上にうまく歩んでいるのを見るというシチュエーションです。


米澤穂信さんの「ボトルネック」という小説がありまして、これは人生に閉塞感をおぼえていた男の子リョウがある出来事をきっかけにパラレルワールドに飛ばされるという話です。

ボトルネック (新潮文庫)

ボトルネック (新潮文庫)

パラレルワールドというだけあってほとんどが主人公の住む世界と同じなのですが、ひとつだけ違うのはリョウが存在したはずの場所には別の女の子サキがいるというだけなのです。自分自身の代わりを誰かが務める世界、そんな不思議な世界を垣間見ることになるわけですが、そんな別の世界を観察していたリョウは徐々にパラレルワールドは至るところで自分が住んでいた世界よりもうまくいっていることに気付くのです。


街を歩けば経営不振で閉店したはずのお店がまだ残っていたり、仲が悪かったはずの両親も仲良く暮らしている。

つまり、自分の役割を別の人間が果たすことでうまく回っている世界を見てしまうというお話でして最後はほんといたたまれない気分になります。

似たようなお話としてはヒッチコック監督の「レベッカ」という作品もありまして、これは亡き前妻と比較されてその影に苦しむ後妻のお話でしてこちらもなかなかおもしろいです。

この2つの作品に共通しているのは、自分自身の能力が自身の人生だけでなく、ひいてはこの世の中におけるボトルネックになってしまっている、もしくはいま自分が与えられている役割をもっとうまくこなせる人がいるという事実を知ることの怖さを表現していることです。


この作品の中で、"35歳無職の売れない俳優だった男性"が"どんな仕事も完璧にこなす優秀な便利屋の男性"が記憶を無くしたことをいいことに、相手の人生と自分の人生を交換して自分の冴えなかった人生をロンダリングしようとするのですがこれがなかなかうまくいかず、逆に自分の冴えない人生を受け取った相手の方がどんどん成功を掴み取っていくわけです。


桐島、部活やめるってよ」で、イケメンで何をやらせても人並み以上にこなせるヒロキが「できる奴はなにをやってもできるし、できない奴は何もできないってだけの話だろ」とあっさりと言ってのけたわけですが、まさにそのとおりで、できる人はどんな境遇であってもそこから這い上がってくるし、できない人はどんなに恵まれた状況におかれてもそれを活かしきることができないのです。


なんでもできる人となにもできない人。

自分がどちらの人間なのかということは自分自身がよくわかっているのですが、あらためてその事実を目前に突き付けられたときに受けるショックはなかなか大きいなと思わずにはいられませんでした。


こういう練りに練った感のある作品ってめったにお目にかかれないので、本当によいものを見たなと感激して帰途についたのでした。


いま一番おすすめしたい邦画!



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