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「すーちゃん まいちゃん さわ子さん」見たよ


“すーちゃん”こと森本好子(柴咲コウ)はカフェ勤務歴十数年。料理という趣味を仕事に活かし、アルバイトの失敗をフォローしたりと、忙しくしていた。一方、“まいちゃん”こと岡村まい子(真木よう子)はOA機器メーカー勤務。不倫相手からの電話に一喜一憂しながら、取引相手の心無いセクハラ発言にもめげないよう、努力の日々。そして、“さわ子さん”こと林さわ子(寺島しのぶ)は母と2人で祖母の介護をしながら、WEBデザイナーとして働いていた。この3人もかつてはバイト仲間。それから十数年、いまでも友情は続いている。3人でお出かけしたり、鍋をつついたり、そんな誰にでも起りえる毎日にもそれぞれのドラマが動き始め…。

すーちゃん まいちゃん さわ子さん 映画作品情報 - シネマカフェ


MOVIX宇都宮で観てきました。


本作は益田ミリさんが描かれている4コマ漫画を原作とした作品でして、全部ではないもののわたしもシリーズのうちのいくつかを読んだことがあります。作品は30代未婚の女性が過ごす毎日を淡々と描いているだけなのですが、日々起こっているさまざまな出来事、それは本当にさりげないことも多いのですが、そのことによって生まれる機微をとても丁寧に描いていてすごくいいなと感じたことをよくおぼえています。

そして劇的な変化なんてないけれど、日常という名のありふれたいろんなことが毎日起きていてそれと向き合って生きていることがとてもグッとくることにおどろいたこともおぼえています。


予告映像についてはさほど目を引く内容ではありませんでしたが、映像からうかがえる雰囲気にどことなく惹かれるものがあったことや上述のとおりとても好きな原作の映画化ということもあり観に行ってきました。


まず作品を観終えての感想はとてもよかったです。

すーちゃんが柴崎コウさんということで原作のイメージよりもちょっとかわい過ぎるかなと感じたし、その影響もあって原作を読んだ時に受けた印象と映画の印象がやや違っているような気はしましたが、日常に転がっているありふれた出来事とそれによって生じる心の動きを丁寧に描くという原作のエッセンスはしっかりと受け継がれていました。



 職場にいる人から嫌な仕事を押し付けられたり、上司にセクハラまがいの言葉を投げつけられたり、そこまでストレートではないにしてもちょっとした悪意をぶつけられて疲弊してしまったりと、すーちゃんたちには毎日たくさんの「ちょっと嫌なこと」が起きます。そしてそのどれもが決して特別なことではなく、現代を生きている人たちにとってはわりとありふれたことであって「ああそういことあるよね...」と思うことばかりなのです。


そんなことに気持ちをすり減らしながら毎日毎日を必死で過ごしているうちに、気付いたら自分が主体で選べることがすごく少なくなっていたというのは30歳を過ぎたくらいの人であればだれもが経験していることではないかと思います。わたしも大学を出ると決めたときからずっとやりたいことがあったのですが、働き出してから30歳くらいまでは目の前にある仕事を片付けることに必死でして気付いたらもうやりたかったことを選択できる立場ではなくなっていました。

そんな変化を自然に追体験できるように描かれていたように感じてそこはすごくよかったなと。


さらにまいちゃんが客先で「3億円以上のマンションを販売に出すから内覧してみてなよ」と勧められたのですーちゃんとさわ子さんを連れて見学しにきたというシーンがとても印象に残っています。

 3億円という販売額にふさわしく、東京タワーを間近で見られる上にものすごい豪華な設備のマンションなのですが、そのあまりの豪華さにみんな子どものようにはしゃぐのですが、ふとした瞬間にこのマンションは自分にはまったく手の届かないものであり普通に生きている限りまったく縁のない場所であることに思い至るわけです。

これは格差だと。


当たり前のことですが誰もが平等なんてことはぜったいにありません。

生まれてからお金に困ったことがないという人がいる一方で日々の生活にさえ困窮している人もいますし、結婚したいけど相手にめぐまれない、子どもが欲しいけどめぐまれない人もいればあっさりとそれらを手にする人もいます。誰もが違うことは当たり前だと頭ではわかっていたけれど、でもそのことを可視化されてしまうとやはりそれはとても辛いことだとあらためて思い知らされるんですよね...。

そして歳を重ねることで自らが選択できることがどんどん減っていくことや、それと同時に自分が手に出来るものもまたどんどん減っていることを実感してズンと気持ちが重くなる瞬間をものすごくリアルに描かれてていたようにも感じました。



そんなわけですーちゃんたちが不快な想いをさせられたり切なく感じる部分が多かったのですが、観終えて思ったのはすーちゃんたちの生き方はとても素敵に見えるなという想いでした。「自分らしく」という表現だとちょっと安っぽいのですが、つらいことともちゃんと向き合って生きていることがとてもまぶしく見えたし、自分自身がそんなふうに出来ていないことをいやというほど思い知らされました。


わたしがとても好きな言葉のひとつに「選択があるうちは他人の人生」という言葉がありますがまさにこの言葉どおりで、すーちゃんたちは自分たちの人生を生きている、言い換えると自分の人生を引き受けているなと感じました。


感想がうまくまとまらないのですが、女性ではない私も共感できる部分はとても多かったし、おそらく同年代の女性であればもっと共感できる部分が多いのではないかなと思います。立場も価値観も、そして性別さえ違う登場人物の機微にふれられるとてもよい作品でした。



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