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「陽だまりの彼女」読んだよ

陽だまりの彼女 (新潮文庫)

陽だまりの彼女 (新潮文庫)

幼馴染みと十年ぶりに再会した俺。かつて「学年有数のバカ」と呼ばれ冴えないイジメられっ子だった彼女は、モテ系の出来る女へと驚異の大変身を遂げていた。でも彼女、俺には計り知れない過去を抱えているようで―その秘密を知ったとき、恋は前代未聞のハッピーエンドへと走りはじめる!誰かを好きになる素敵な瞬間と、同じくらいの切なさもすべてつまった完全無欠の恋愛小説。

陽だまりの彼女 (新潮文庫) | 越谷 オサム | 本 | Amazon.co.jp


(注意) 本エントリーは作品の結末に触れている部分があるので未読の方はご注意ください。



先日、主演が上野樹里松本潤で監督は三木孝浩監督というおれ得以外なにものでもないすばらしいスタッフ・キャストの映画が今年の秋に公開されるということを知って飛び上がってよろこびました。ひさしぶりに上野樹里を劇場で観られる!しかもいきなり踊りだすような変でおもしろくないコメディじゃなさそうだ*1ということでその日の夜は興奮して眠れないほどでした。


そしてうれしいことは重なるものでして、その話を知った翌日に映画館へと足を運んだのですがなんとその作品の予告を偶然見かけたのです。


映像からつたわってくる空気のやわらかさはまさに三木監督の過去の作品と同じようにたいへんわたし好みでしていまから半年先の公開が楽しみでしょうがないのですが、このままただ予告だけをながめて半年間公開を待つのも切ないので、まずはとてもひょうばんのいい原作を手に取ってみました。


読み始めてすぐに気になったのがすごい読みやすいということです。

その理由を読みながら考えていたのですが、緻密だけどくどすぎなくてバランス感覚に優れているんですよね。ここまで容易に場面を想起できる読みやすい本は初めてかも知れません。個々のシーンを、そして主人公の浩介の気持ちを具体的に想像しながら読みました。


ただ、本作が決定的によろしくないところは作品そのものではなく宣伝文句として書かれた数々の言葉がすごく気に障る点です。


残念ながら最後まで読んだらストーリーそのものはあまりいい話だと思わなかったし、感動もまったくしなかったけれど他の作品とは一線を画している個性を感じる部分があって読んでみてよかったなと思いました。好き嫌いを超えていい作品だと言える稀有な作品だと思います。


ですがこの本の帯に「女子が男子に読んでほしい恋愛小説No1」って書いてあったのですが、果たして本当にこれを男子に読ませたい女子っているんですかね。もしいるのであれば、どういう理由で「恋愛小説としておすすめしたいのか」を教えて欲しいです。くわえて完全無欠の恋愛小説とも書いてありましたが、完全無欠って...。宣伝というのは得てして誇大になりがちですが、それにしても大きく出すぎです。


この売り文句でこの内容だとJAROに訴えたくなります。


この煽り文句を読んで過度に期待していたつもりはなかったのですが、でも女性が男性に読ませたいと思う小説ってどういう話だろうと気になるじゃないですか。ところが、いざふたを開けてみたら「彼女は実は子どもの頃に拾ったネコでしたー」というファンタジーまっしぐらな展開、かつ、男性はネコのきまぐれに振り回されて結婚までしたのに寿命だからという理由で失踪されたあげくついでに彼以外この世のすべての人の記憶から彼女の記憶は無くなってしまい彼はおいてけぼりにされるというひどい展開なのに、いったいこのどこにグッととくる要素があるんでしょうか....。


そりゃネコはいいですよ。思う存分好きなことをしてこの世からいなくなったんですから。

でも記憶と身の回りのモノだけを残して置いていかれた主人公の浩介のことを思うとやるせなくてしょうがないです。
さらに自分以外の人はみんな彼女の記憶を無くしているわけですから、誰にも彼女とのことについて話すことはできないし、仮に話したところで元からいない人のことをお互いが知っている人として語ったら「頭がおかしくなったんじゃないか」と周囲から好奇の目で見られることを避けることはできません。

大事な人を失ったのに誰ともその悲しみを共有できず、死ぬまでそのことを自分ひとりで抱えていかなければならないことは果たして感動したり共感すべき感情でしょうか?わたしはそうは思いません。


もしかしたら二人でいっしょに過ごした思い出があるからいいだろうという意見もあるかも知れません。

たしかに歳をとって余生と言われる人間であればそれでいいかも知れませんが、この主人公はまだ20代の青年です。あと何年生きるのか分かりませんが、大好きな人とのわずかな思い出だけを抱えて生きていくには残りの人生は長過ぎます。そしておそらく、浩介はこれから恋愛も結婚もすることなく消えてしまった彼女のことをしのんで生きていくことは想像に難くありません。残酷すぎます。



上でも書いたとおりたしかに話はかなりおもしろいです。

好きかどうかどうかは別としてもいままで想像したことさえないとてもユニークなアイディアだし、そのアイディアをこれだけふくらませてひとつの物語にしてみせたことはたいへんすばらしいことだと思いますし、冒頭で書いたとおり場面を想起しやすい丁寧な文章はとても好感度が高くてクセになりました。


ただ、この小説を「おすすめしたい恋愛小説」として男子に読ませたいという女子がいたら、いったいどういう理由で読ませてみたいと思うのか教えて欲しいです。本当にわからないし、想像もできません...。単体で評価するのであればよい作品と断言できますが、変な宣伝文句が付いてしまったせいで素直にいい作品として消化できず悶々としてしまいました。


というわけで、恋愛小説としてはいまいちでしたが、話自体が嫌いというわけではありませんし映像化するうえでどうなるのか楽しみな部分もありますので映画は楽しみにしてます。

*1:キラー・バージンロードをdisっているわけではありません