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「シンプル・シモン」見たよ


アスペルガー症候群の主人公の目に映る世界を描き出し、2011年のアカデミー賞外国語映画賞のスウェーデン代表にも選出された長編作。広汎性発達障害のひとつとして知られるアスペルガー症候群のシモンは、物理とSFが大好きで、気に入らないことがあると自分だけの“ロケット”にこもってしまう。そんなシモンを理解できるのは、兄のサムだけ。しかし、シモンのせいでサムは恋人に振られてしまう。兄の新しい恋人探しを始めたシモンは、偶然出会った天真爛漫なイェニファーに狙いを定め、2人を近づけようとするが……。

シンプル・シモン : 作品情報 - 映画.com


本作はアスペルガー症候群のシモンが兄の恋人を探すというお話でしたが、「アスペルガーの人からみた非アスペルガーな人」というのはこんなふうに見えていたのかというところがスッと理解できるたいへんユニークな作品でした。

シンプルでゆらぎがなくすべてが数式で表記できる物理現象をこよなく愛するシモンにとって、同じ言葉であってもコンテキストによって意味が180度変わってしまう言葉のあいまいさや涙はうれしいときや悲しいときのどちらでも流すという感情のあいまいさは複雑すぎて理解できないというのはなるほどたしかにそのとおりだなと実感できます。

わたし自身は日常生活の中で身に着けたさまざまな機微を理解するスキルのおかげでなんとか生きていられますが、あらためてシモンの立場に立ってこの世界を俯瞰して観ると人間というのはわたしが思っていたよりもとても複雑なルールにのっとって生きているんだなと感心せずにはいられませんでした。


本作でわたしがとくに気に入ったのが冒頭のシモンがドラム缶にこもっているシークエンスです。

ドラム缶にこもってしまったシモンに対して両親は一生懸命話しかけたりお金で気を引こうとするのですが、シモンはそんな相手の気苦労などまったく意に介すことなくドラム缶から出てこようとしません。もうどうにもならなそうだなと思ったそこに現れたのが兄のサムです。
サムは両親のようにただ呼びかけるのではなく、宇宙ステーションと地球のコンタクトを模してシモンに呼びかけをしたところ、シモンはその呼びかけに答えるようになるのです。

ここで大事なのはコミュニケーションをとるときには、コミュニケーションを取りたいと思っている側が相手にあったプロトコルを選んでコミュニケーションをとる必要があるということです。母国語が同じだと言葉が通じるというだけで何となく分かりあえるような気もしてしまうのですが、実際にはそんなことはありません。すべての他者に対して正確に考えていることを伝える術と言うのはだれも持ち合わせていなくて、伝えたい相手ごとに「伝わりやすいプロトコル」を選んだうえで相手がもっとも理解しやすい方法で疎通を図らなければ意図したとおりには絶対伝わらないんだなということをつよく実感しました。


スウェーデンらしいポップな音楽や色使いも魅力増幅装置として機能していて、ひじょうにすばらしい傑作だと思います。


@宇都宮ヒカリ座で鑑賞


公式サイトはこちら